"I can not wait, mom!"
自動車に乗り込んだ第一声がこれだ。目はキラキラとしている。
「ママ、シリウス ブラックってね、ハリーのゴッドファーザーだったんだよ。それに、あのネズミ、本当はネズミじゃなかったんだ。あー、早く明日が来ないかな。」
一気に喋る息子の声を背後に聞きながら、私は笑顔でイグニッションキーをまわす。
アメリカで数年前に、本をたくさん読み、語彙力をつけた子供のほうが学力が伸びるという説が学会で発表されたそうだ。また、クリントン前大統領の時代に、英語力を伸ばそうという動きがあった。そこで、私たちの住んでいる学校区の教育委員会は、本を読むことにとても力を入れ始めた。
今、小学校3年生の息子の宿題は、毎日プリント1まいずつの英語の単語と文章作りに関するもの、週に2枚ほど出る算数の問題、それと本読みが一日最低20分となっている。
私が子供のころなら、国語の宿題は教科書の音読だった。しかしこちらの教科書は学校のもので、生徒は家に持って帰らない。そのかわり、子供たちは自分が選んだ好きな本を宿題で読んでいいことになっている。
ただし選べる本は、どんなに絵が入っていたとしても、チャプターブック、つまりいくつかの章から成り立っている本でないと許されない。また、1週間で読める程度の長いものでなければならないとされている。
3年生になったばかりのころは、この宿題に息子は文句を言っていた。まだ長い物語を読んだこともないので、読破したときの喜びもしらない。また、語彙も少ないので選べる本も少なかった。
そんな息子のような子供がだんだん本に惹かれていくようになる。これは、担任の先生の力が大きい。息子の担任の先生は、英語の時間に、時間を区切って面白そうな本を読んでくれるというのだ。それも、ハリーポッターシリーズのような長いお話を、抑揚をつけ、面白おかしく読んでくれる。
先生は、それを毎日続けて、必ず本を読破してくれる。子供たちは先生の音読を聞き、歓声を上げることもあれば、体を硬直させることもある。そうやって、先生の力を借りて、一冊の本を読むことの喜びを学び取っていく。
学年の始めのころ、薄っぺらなチャプターブックを持っていたクラスメイトの中から、クリスマスを越えたころから分厚い本を手にする子がちらほら出始める。先生が一度読んでくれたことがある本なら、なんとか読めると子供たちも安心するらしい。
息子も、もうそのころには本を読む宿題に対して文句を言うことはない。スターウォーズシリーズや歴史や科学をベースに書かれているマジックツリーハウスシリーズ、レゴのバイオニクルシリーズ、自分の好きな本を図書館で借りたり、あるいは学校から本を購入したりする。
学校から買う場合は、一般の本屋で売っているよりもずっと値引きされた値段で買えるメリットがある。
今は丁度学年末。今まで読む力が弱かった息子が、確実に力をつけているのを実感する。
今週末は、ブックリポートの締め切りだ。ブックリポートは、決められたジャンルの本を読み、その本についてリポートを書く。でも、日本の読書感想文とは全然違う。
たとえば、偉人伝を読むように言われたブックリポートでは、本を読んだ後、子供たちは偉人になったつもりで、偉人のことを説明する文章を書く。たとえば、エジソンなら、「私はトーマス エジソンです。私のことを、みんなは、メンローパークの魔法使いと呼んでいました」といった具合だ。
子供はそれをみんなの前でスピーチできるように練習する。また、その偉人が発明したものを工作で作ったり、偉人が着ていたのに似たような服を着て、みんなの前で発表するのだ。
ファンタジーのジャンルの本では、本の中に出てきた登場人物が子供たちをバースデーパーティーに呼んでくれたという想定で、バースデーカードを書く。カードの裏には、持っていったプレゼント3種類と、なぜそれを選んだかという理由を書く。もちろん、カードには、お祝いの言葉を書き、表には綺麗な絵を描くのだ。
だから、ブックリポートは大変だけれど、楽しくもある。
今回のブックリポートは、生物に関する本を読むことになっている。その後、3Dの模型を作り、クラスメイトの前でその生物についてスピーチをすることになっている。
息子は粘土で蛇を作り、蛇のウロコのかわりに、スパンコールをびっしりと糊付けした。今日帰ってきたら、マーカーでスパンコールを塗りつぶしながら、ウロコの模様を完成させるつもりだと言っていた。
これが7年生、日本でいう中学1年生ぐらいになると、学校で『オデッセイ』を読むようになる。娘はいろいろ批評しながらも、『オデッセイ』を楽しく読んでいるようだ。そういう娘のお気に入りの作家は、ステファン キングだ。あの「恐ろしいほどの怖さがたまらない」と言う。
私の子供たちは、テレビも好きだし音楽も大好きだ。もちろんマンガも読む。しかし、本を読み自分の想像の世界で物語を遊ぶことも知っている。このことは、私の子供たちにとって何よりの先生からの贈り物だったように、私には思えるのだ。
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