パソコン要約筆記ってなに?

<実際の入力風景>

 要約筆記と言うのは耳の聞こえの不自由な方々に、筆記して内容を知らせるものです。

 けれども書く能力には限界があります。手慣れた要約筆記者でも平均して1分間に70〜80字ぐらいで、90字以上となると、たいへん難しくなります。

 それに対して話すスピードは、定時のニュースを伝えるアナウンサーで1分間に450字程度、早口の人になれば700字ぐらいは話します。 つまり要約筆記者でも、話している内容の1〜2割しか書くことができないのです。

  もっと内容を伝えることはできないだろうかと考えられた結果、パソコンで入力するという方法が考え出されました。それが『パソコン要約筆記』です。

  パソコンを使って入力することによって1分間に90字以上、タイピングの速い人なら300字程度、入力できるようになりました。これはゆっくり話す人だと、ほぼその全文を入力できるという画期的なことなのです。

  それでは音声入力などの機能を使って、喋ったこと全部を文字に変換すればいいではないかと思われるかもしれません。しかし読み取る能力は1分間に約200字程度です。それ以上入力されてもスクロールされて行くばかりで、読み取ることが出来ないのです。

  ですからパソコンで入力するにしても、大切なことは残らず入れ、反対にそれほど必要でないと思われることは落とす、つまり『要約』して入力することが必要なのです。 ですからただのタイピングではなく、あくまでも『パソコン要約筆記』なのです。


1.パソコン要約筆記者の能力

 ワープロ検定1級では、1分間に90文字入力できることが求められます。

  しかしパソコン要約筆記は、もともと筆記するよりも多くの情報を伝えたいというところから始まったのですから、せめて1分間に120文字は入力できるようにしたいところです。 でなければ、わざわざパソコンを使う意味がなく、筆記で十分ということになってしまいます。

  しかし1分間に120文字と言っても、これはなかなかたいへんです。 (練習ソフトを使って、自分が1分間にどれだけ入力できるか、試してみてください)

 そこで要約筆記の二人書き同様、1つの文章を2人で手分けして入力する『二人入力』という方法が考え出されました。 これなら1分間に70文字しか入力できない人たちでも、力を合わせれば1分間に120文字程度の速さで入力して行くことができます。

 幸い手書きと違ってパソコン入力の場合、表示された文字に個性の違いは出ませんから、全く違和感なく読むことができるのが強みです。

「1分間に70文字でさえ、今の私にはとてもムリ」という人には、要約筆記の前ロール同様、事前に渡された原稿をパソコンで入力しておいて、当日にそれを流すと言う方法で協力する方法もあります。

 これなら入力スピードは遅くても、正確に入力さえすればいいのですから、初心者でもパソコン要約筆記に参加することができます。


2. パソコン要約筆記に必要なもの

  パソコンは各会場に持って行くことを考え、携帯に便利なノートパソコンを用意してください。 パソコンが1台しかなくても画面をのぞいてもらう形でのパソコン要約筆記をすることはできます。

 しかし要約筆記と同じく入力者は10〜15分ごとに交替する必要がありますから、交代要員を含めてパソコン要約筆記者は少なくとも2人必要です。

  パソコンが2台あれば、入力用に1台、訂正用に1台と、役目を分担してパソコン要約筆記を行うことができます。

 この場合は2台をつなぐ専用のケーブル(コード)が必要です。専用のソフト(たとえばIPTalk)を使用すれば1台の時より、さらにスムーズで正確な入力ができるようになりますが、パソコン要約筆記者は交代要員を含めて2組分、4人必要となります。

  読み手の数が増えてスクリーンに映し出さなくてならなくなったら、さらにスキャンコンバータおよびプロジェクター、配線のための専用のコード類がそれぞれ必要になります。

 また二人入力にするなら、パソコン2台と、パソコン1台に付きLANカードが1枚づつ、それらをつなぐ専用のケーブル、そしてHUBが1台が必要です。 つまり大きな会場で、いちいち席を立ったりせずに交替をして、二人入力で速やかに読みやすいパソコン要約筆記を行うとしたら、LANカードをセットしたパソコンが4台、HUB1台、出力用パソコンが1台、スキャンコンバータ1台、プロジェクター1台、それらをつなぐ専用コード類が多数必要と言うことになります。またパソコン要約筆記者も少なくとも5人は必要です。

 

3. 入力速度を上げるには

 入力には大きく分けて、『ローマ字入力』と『かな入力』があります。

 ローマ字入力は覚えるキーの数が少ないので、早く覚えて入力したいという方に向いています。しかしキーを打つ数がかな入力に比べてほぼ2倍ですから、1分間に120文字以上入力できるようになるには相当の訓練が必要です。

  かな入力はキーの位置を覚えるのに時間がかかりますが、いったん覚えてしまうと、ローマ字入力の約半分のタイピングで入力できますから、訓練次第で1分間に150文字ぐらいは打てるようになります。

 この他に『親指シフト』という入力方法があります。実は1分間に200文字以上という入力速度の人達は、ほとんどがこの親指シフトです。

  入力はタッチ・タイピングで行ってください。つまり手もとのキーを見ないで(画面 だけを見て)入力する方法です。入力速度を上げるには、このタッチ・タイピングが不可欠です。 市販のタイピング・ソフトがたくさん売り出されていますが、インターネットを通 じてダウンロードできる要約筆記用のフリーウエア(無料)ソフトもあります。

  単語登録・辞書登録を使いこなすと、入力速度を上げることができます。たとえば「難聴者・中途失聴者協会」を入力する時、タイピングするだけでも時間がかかりますし、目的の文字が一度で出てくれなければ何度も変換し直さなければなりません。

 一方あらかじめ「なきょう」で登録しておくと、一度変換キーを押すだけで目的の文字の表示ができます。 講演者の名前や肩書きなどが事前にわかっている場合は、登録しておくと便利です。 ただしこれに頼って数多く登録しすぎると、かえって現場でど忘れしたり、「元気な兄弟」と打つつもりが、「元気難聴者・中途失聴者協会台」ととんでもない表示になったりするので要注意。

 あくまでも登録は必要最小限にしておき、終了時には必ず消去しておきます。 入力ミスを少なくする工夫をしましょう。

 つまりいかに目的の文字を、1度か2度の変換で出すことができるかということです。 ヒット率が悪いと、1分間に120文字を入力できる能力の持ち主でも90文字程度の能力に落ちてしまいますし、その分オーバーワークになリ、疲れが早くなってしまいます。

 たとえば「かてい」と入力する場合でも「家庭」は「かてい」で、「課程」は「かほど」、「仮定」は「かりてい」、「過程「は「すてい」と打ち分けるとヒット率を上げることができます。


4. 入力練習について

 まずホームポジションを覚えましょう。最初は変換のことなど考えないで、ひらがなで速く打つ練習をします。

 パソコン要約筆記でも要約筆記と同じく、思った漢字が直ぐに出ない時は、『ひらがな』のまま表示します。また訂正役がいれば、漢字に直してくれます。ですから、とにかくひらがなで打てるようになることが大切です。 最初はゆっくり打ちましょう。いきなり速く打とうと思わないこと。同じテープを繰り返し聞きながら入力練習をすれば効果 的です。

 次に何を喋るか覚えてしまい、指が先に動いてしまうようになってもかまいません。繰り返し練習すれば入力速度は次第に上がってきます。 練習時間は1日30分〜1時間以内で十分です。長くタイピングを続けると疲れるばかりで効率はかえって悪くなります。

毎日がムリでも1週間に30分のタイピング練習を欠かさないでいれば、1年後には必ずパソコン要約筆記ができる入力速度になっているはずです。